Oecanthus longicauda
カンタン
美声
北海道・本州・四国・九州
7月下旬~11月
クズ原やヨモギが繁茂する草原に生息する。寂しげな美しい声で鳴くことで知られる。鳴く虫の中でもとりわけ「鳴く場所」にこだわり、音が増幅してよく響かないと鳴き止んでしまう。もとから存在する場所を利用したり、時には自らステージを作ったりする。華奢な体をしているが、若干の肉食傾向があり、アブラムシ等の小昆虫を食べることが知られている。特に幼虫期には必要な餌資源となるようだ。オスの翅の付け根には誘惑腺という甘い分泌物が出るところがあり、メスがそこを舐めている間に交尾を行う。交尾自体は一瞬で終わるが、甘いものが好きだということもあってか、しばらく舐め続けている。鳴き声や腹が黒いことから他の類似種と区別できるが、関東と関西の一部地域では腹が白い個体群がいるので過信はできない。北海道や本州の山地のような冷涼地では、体が黒味を帯びることがある。その理由については不明だが、太陽の光で効率的に体温を上げるためと考えられる。
カンタンの仲間は本種の他に4種がいる。平地や海岸近くの草原でよく見られるヒロバネカンタン、山地などの冷涼な環境のキイチゴ類で見られるコガタカンタン、南西諸島にのみ生息するチャイロカンタンとインドカンタンが知られている。
成虫の姿
オス
メス
生態写真
カンタン終齢幼虫
長草原や低木で見られる。冷涼地では体が黒化する傾向があるが、幼虫時代はあまり黒くない。
カンタン♂
鳴いているオス。夜には鳴く個体が多くなるが、ライトの光にとにかく敏感で、当てるとすぐに鳴き止んでしまう。
カンタン♀
メスはより細身に見える。鳴き声がする草原を隈なく探すと見つかる。
近縁種
Oecanthus euryelytra
ヒロバネカンタン
その名の通り翅が広いカンタン。オスは前翅の横幅が先端に向かって広くなり、丸みを帯びる。腹部が白いことからカンタンと区別できるが、その方法は一部地域では使えない。カンタンの仲間の中では警戒心は薄く、鳴いている様子を撮りやすい。比較的暖かい環境を好み、本州・四国・九州・南西諸島に生息する。関東以西では初夏と秋の2回、南西諸島では通年発生する。
Oecanthus rufescens
チャイロカンタン
南西諸島に広く分布するカンタンの一種。平地の草原で見られる。ヒロバネカンタンよりも鳴き声の一声一声が長い。南西諸島には外見上区別のつかないインドカンタンも記録され、こちらはさらに長く鳴く。この鳴き声の長さが両者を区別する唯一の手段なのだが、観察していると、チャイロカンタンがインドカンタンと同じ鳴き方をする場面が多々あり、これは単なる鳴き分けで同一種の疑いがある。