Ectatoderus sp.
フトアシジマカネタタキ
美声
トカラ列島・久米島
1年中
トカラ列島と久米島に分布するカネタタキの一種。薄暗い原生林の林床から樹上に生息する。1年中成虫が発生していて数も少なくないが、樹冠や茂みの込み入った場所におり、人前に姿を見せることはあまりない。前胸が翅を覆い隠すように大きく後ろにせり出しているのが特徴で、翅の黒い縁がわずかに顔を覗かせている。見た目は地味だが、とても美しい鳴き声で知られ、その希少さも相まって愛好家の憧れの的である。ところが、現在では条例により昆虫等の採集が全面的に禁止されているため、手に入れることが難しくなってしまった。「チン...チリリ」という鳴き声の他に、メスへの求愛時には腹を打ち付けて振動音も出す。翅以外で音を出す種類はいくつか知られているが、組み合わせるタイプは珍しい。
成虫の姿
オス
メス
生態写真
フトアシジマカネタタキ若齢幼虫
全体的に黒っぽく、正中線に白い筋模様が入るのが特徴。
フトアシジマカネタタキ中齢幼虫
前胸背部に4つの黒い斑点があるのが特徴。夜になると葉上や枝を歩いたり静止する様子が見られる。
フトアシジマカネタタキ終齢幼虫
オスの終齢幼虫。前胸が後ろにせり出していて、翅芽はこの下にある。
フトアシジマカネタタキ♂
前胸が広く黒い翅が少し見えるので分かりやすい。少なくとも久米島には類似種がいないかもしれない。
フトアシジマカネタタキ♀
外見は他のアシジマカネタタキとほとんど変わらない。前胸側面にある黒色の線状模様が太く短めで、脚の模様がわずかに異なる。
フトアシジマカネタタキの卵
朽木などに産卵する。2 mmほどだが、成虫の体長から考えると大きめ。
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近縁種
Ectatoderus sp.
イリオモテアシジマカネタタキ
原生林の低木上で見られるアシジマカネタタキの一種。西表島で生息が確認されており、その他の島ではまだ見つかっていない。オスは黒い前翅が前胸から少しはみ出し、メスは胸部背面に黒い斑紋が見られるなど、外見が酷似するアシジマカネタタキ属の中では見分けやすい。秋に成虫が発生する。
Ectatoderus sp.
アシジマカネタタキ sp.
南西諸島に分布するアシジマカネタタキ属の一種。正確な分布域は不明で、本土に生息するアシジマカネタタキとは別種と思われる。翅は退化しているのか側面からも見えず、鳴く素振りも見せない。その代わり、後脚を接地面に擦り付けて振動音を出す。ゆっくり長く一回擦るときと短く繰り返し擦るときがあり、振動音を使い分けて情報伝達していると考えられる。原生林の低木上や林床の落葉上におり、周年で見られるが、本種なのかよく似た別種なのかは不明。
Ectatoderus sp.
アシジマカネタタキ sp.
低木上で見られるアシジマカネタタキの一種。奄美大島で春に成虫を確認している。近隣の離島に生息しているかは不明。鱗片は黒っぽく、オスは黒い前翅が前胸から少しはみ出る。翅を使って鳴く様子はなく、後脚を接地面に擦り付けて音を出す。発音パターンは確認した限りでは1種類のみ。メスはフトアシジマカネタタキに似ているが、一回り小さく脚の模様が異なる。
Ectatoderus sp.
アシジマカネタタキ sp.
石垣島に生息するアシジマカネタタキ属の一種。その他の島での分布はまだ確認できていない。晩秋に成虫と終齢幼虫を見ている。翅は側面からわずかに見える程度で、形態は本土に生息するアシジマカネタタキとそっくりだが、同種かどうかは現時点で不明。夜間に原生林の低木やシダの葉上で見つかる。