Phyllomimus sinicus
ヒラタツユムシ
南西諸島
6月下旬~3月下旬
ヒラタツユムシは、南西諸島の森林に生息するヒラタツユムシ亜科の昆虫である。通常は葉に擬態しており、じっとして動かない。しかし、擬態を解くとクサキリ類に似た姿になることから、「クサキリモドキ」の別名を持つ。オキナワウラジロガシやイタジイなどの樹木の周辺に多く生息しているのが観察されており、特定の樹種への依存性については、さらなる調査が必要である。食性は比較的幅広く、樹木から草本まで、様々な植物の葉や果実を食べる。生息域では頻繁に鳴き声が聞こえるため、個体数は多いと推測されるが、樹冠部に生息しているため、直接目にする機会は少ない。樹上から「ジーッ!」と短い鳴き声が聞こえてきたら、ヒラタツユムシの可能性が高い。天敵に襲われた際には、逆立ちのような姿勢で威嚇し、後脚で攻撃を加える防御行動をとる。幼虫は3月下旬頃に孵化し、6月下旬頃から成虫が出現する。10月になっても幼虫が見られることから、孵化時期や成長速度にはばらつきがあると考えられる。ヒラタツユムシは丈夫で長生きし、3月下旬になっても鳴き声が確認できる。しかし、奄美群島や沖縄諸島では夏の時期に個体数が増加し、秋頃には減少する傾向がある。
2017年には、中部地方で大陸由来の外来個体が発見されており、今後の生息域拡大と、それに伴う生態系への影響に注意が必要である。
成虫の姿
オス
メス
生態写真
ヒラタツユムシ初齢幼虫
小指の爪ほどの大きさ。クビキリギスと似ているが、後脚が短く体は横に広い。また背中に赤い斑点がある。
ヒラタツユムシ中齢幼虫
若い幼虫のうちは低木でも見られ、葉の裏にいることが多い。触角を目印に探すと良い。
ヒラタツユムシ終齢幼虫
幼虫期は成虫とは異なり淡い黄緑色をしている。葉の裏の色に合わせているのだろうか。
ヒラタツユムシ♂
成虫オス。ほとんどが高い木の上にいるが、マント群落を辛抱強く探すと低いところに降りた個体が見つかる。
鳴くヒラタツユムシ
前翅の発音器を擦り合わせて鳴くオス。周りにいる他のオスの声につられて鳴くことがある。
ヒラタツユムシの卵
樹皮に産卵管を差し込んで卵を産む。薄い袋状の構造物の中に卵が入っている。