Vescelia pieli ryukyuensis
リュウキュウサワマツムシ
奄美大島・徳之島
沖縄島・久米島・石垣島・西表島
3月中旬~12月下旬






リュウキュウサワマツムシは、南西諸島の渓流沿いに生息するスズムシ科の昆虫である。姿はスズムシとマツムシの中間のようで、独特な風貌を持ち、美しく澄んだ鳴き声で知られている。採集が難しいこともあり、鳴く虫の愛好家にとっては憧れの存在だ。ホソバリュウビンタイやクロヘゴなどのシダ植物の葉の上で鳴くことが多く、一年を通じてその美しい音色を楽しむことができる。ただし、成虫の個体数には大きな変動があり、全く姿を見せない時期もある。リュウキュウサワマツムシの一生は長く、その大部分を幼虫期が占める。世代交代のサイクルは6か月以上と推定されており、そのため発生のピークは毎年異なる。警戒心はそれほど強くないが、動きは非常に俊敏である。飛翔能力はないものの、後翅を使って短時間滞空することができる。日中は岩の隙間などに身を潜めているため、観察には夜間が適している。しかし、彼らが生息する島々にはハブも分布しており、渓流域はその活動範囲でもあるため、安易に立ち入るのは危険だ。加えて、湿った岩場は苔むして滑りやすく、転倒などのリスクも高い。リュウキュウサワマツムシを探す際は、十分な安全対策を講じる必要がある。美しい鳴き声を楽しむためにも、常に安全を第一に心がけてほしい。
成虫の姿

オス

メス
生態写真

リュウキュウサワマツムシ若齢幼虫(飼育下)
ゴマ粒ほどの大きさ。これを夜の沢沿いで見つけ出すのは至難だろう。すでに斑模様が出てきており、触角は黒い。

リュウキュウサワマツムシ中齢幼虫
鳴かない上に小さいので、なかなか見つからない。大体決まった場所にいる。

リュウキュウサワマツムシ亜終齢幼虫
若齢~中齢幼虫と比べると、行動範囲が少しばかり広い。ようやく性判別がしやすくなる。

リュウキュウサワマツムシ♂
方向転換しながら鳴くため、居場所がつかみづらい。また音が大きく良く響くため、近くにいると思いきや意外に離れていたりする。

リュウキュウサワマツムシ♀
鳴かないため、ある程度まとまった数が見られるところでないと発見は難しい。

リュウキュウサワマツムシの交尾
前翅を立てたオスの上にメスが乗り精球を受け渡すのは、スズムシ科やマツムシ亜科の鳴く虫で見られる行動。