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直翅類は陸域に広く生息しています。草原のほか、森林や荒れ地、砂浜、洞窟、アリの巣など様々です。 同じ環境でも、種類によって樹上や林床など居場所が異なります。どんな環境に暮らしているか知ることで、目的の種に出会いやすくなります。見つけた直翅の名前が知りたい場合は「かんたん検索」を試してみてください。
草原
直翅探しでは最も身近な環境が草原です。多くの直翅は植物を餌とするので、草原に行けば必ず何かしらの種類と出会えます。河川敷や田畑の畔、公園、空き地など、一見して貧相な環境でも、適応して暮らす直翅が見られます。
同じ草原といっても、種類によって好む環境が異なります。草丈の低い芝地のような明るい草原は、トノサマバッタやヒナバッタなどのバッタ科が好む傾向にあります。一方、自然度の高い草深いところには、ショウリョウバッタモドキやマツムシなどの草上性直翅のほか、地表性コオロギなど多くの直翅が見られます。

林縁
「林縁」は、読んで字のごとく森林の縁を指します。草地や裸地、道路などと接した部分で、日がよく当たるため林内とは違った植生が発達しています。明るい林道も林縁に近い環境になります。クズなどのつる性植物が覆っているところを「マント群落」、下草が茂っているところを「ソデ群落」と呼びます。
林縁は森林性で明るい環境を好む直翅だけでなく、林内に生息する直翅も出現するため、とても良い観察スポットです。セスジツユムシやクツワムシ、フキバッタなどは林縁を探すと良いでしょう。また、葉がよく茂るところには樹冠で暮らす直翅が現れることがあります。

樹林
森林にも多くの直翅が生息しています。垂直方向に環境が変化するため、地表から樹冠にかけて見られる種類も変わります。樹冠付近に暮らす一部のツユムシやササキリモドキはなかなか姿を見せないので、林縁や近くの灯火を回ると効率が良いです。
地表から草上にはヒシバッタ・モリバッタ・カマドウマなど、低木の葉上にはカネタタキ・ツユムシ・コロギスなど、樹幹にはクチキコオロギ・クロギリスなど、樹冠にはヒラタツユムシ・ササキリモドキなどが見られます。

半裸地
土や砂が露出し、草がまばらに生えた場所が半裸地です。植物を餌として必要としながらも、裸地を好む直翅が見られます。
イボバッタやヒシバッタのほか、近隣の草原からトノサマバッタやクルマバッタモドキが来ていることがあります。また、土が湿っているエリアにはノミバッタが暮らしています。

礫河原
河川敷のうち、石がごろごろしていている環境を「礫河原」と呼びます。増水のたびに水没し、植物が流されることで維持される環境です。一見すると生き物なんていないように感じますが、この特殊な場所に進出し依存して暮らす生き物がいます。
カワラバッタ、マミジロノミバッタ、カワラスズがこうした環境を好みます。

湿原
地表が常に湿っている湿原では、多湿な環境を好む直翅が見つかります。ヨシなどのイネ科草本が優占し、こうした植物を主に利用するササキリやヒバリモドキが生息しています。水が張ってある休耕田などもこうした環境を好む生き物の棲み処になります。
キンヒバリやセグロキンヒバリなどのほか、セグロイナゴやウスバカマキリも見つかることがあります。

砂浜
波や風により砂礫が堆積した、植物も疎らにしか生えていない環境に暮らす直翅が存在します。近年では砂浜の消失や環境の悪化により、多くの府県で絶滅危惧種に指定されている場合もあります。
ヤマトマダラバッタやハマスズはその代表です。奄美や沖縄の転石が多い砂浜にはハマコオロギが暮らしています。

海岸
海岸は本来砂浜も含まれますが、ここでは海岸林から岩礁までの環境と定義します。湿度と風通しの両方を要求する直翅が海岸の環境を好むので、温暖な本土の太平洋側や南西諸島においてはより多くの種が見つかります。
海岸林ではリュウキュウカネタタキやオチバカネタタキが、岩礁ではウミコオロギの仲間が見られます。

マングローブ林
マングローブとは、熱帯・亜熱帯地域に生育する塩生植物の総称です。ここでの「マングローブ林」は、オヒルギ・メヒルギ・ヤエヤマヒルギといったヒルギ科で構成される群落を指します。潮の満ち引きにより、地表が海水に沈んだり露出したりを繰り返す特殊な環境です。
樹上にはヒルギカネタタキやヒルギササキリモドキが、地表にはマングローブスズが見られます。

高山・亜高山帯
北海道や本州の標高が高く、夏 でも涼しい環境です。特に森林限界を超えた高山帯に生息するものは、氷河期の生き残りと考えられています。地理的に隔離されたため、産地によって異なる特徴をもっていたり、亜種として区別されるものもいます。
ヒメギスの仲間やヒナバッタ、フキバッタ類が生息しています。

洞窟
石灰岩が長い年月をかけて浸食されて形成された洞窟では、主にカマドウマが見つかります。多くは日中に過ごす隠れ家としての利用で、夜間には外に出て活動しています。沖縄の辺戸岬沖の海底鍾乳洞では未記載のウミコオロギが見つかっていていることから、まだ知られていない未知の直翅がいる可能性があります。

アリの巣
アリの巣からは、好蟻性昆虫と呼ばれるアリを利用して暮らしている昆虫が見つかります。アリヅカコオロギはそんな好蟻性昆虫の一つです。種類ごとに共生するアリが異なり、中にはアリなしでは生きていくことができないものもいます。
アリには申し訳ないですが、少し巣を壊させてもらうか、引っ越し行列をじっと見つめていると発見できるかもしれません。



